匠は負けたのか

あるテレビ番組でソフトバンクの孫正義社長が、中国の友人のスマートフォンを受託生産している会社の社長に工場を見せてもらったところ、人間の作業員が大勢で組み立てているとばかり思っていたのに、ズラッと産業用ロボットが並んでいて組み立て作業をしていたのに驚いたと語っていました。
人間が組み立てるよりロボットの方が安いのかと聞いたところ、コスト的には人間の方が安いが、最近のスマートフォンは部品が細かく精密過ぎて人間には組み立てられないため、産業用ロボットを導入せざるを得ないとの答えで、それを聞いた孫社長は驚いたと言っていました。私も本当にビックリしました。
自動車工場などで作業をしている産業用ロボットの動きや作業内容などを見る限り、人間に出来ない仕事とは思われません。日本のような人件費の高い国では1日中、文句も言わずに働いてくれる産業用ロボットの方がコスト的に有利で、それがロボットが導入される理由だと思います。
しかし、企業秘密で見学やテレビカメラが入れない、デジカメやスマートフォン、タブレット端末などを生産している工場で働く産業用ロボットは精密作業用で、人間以上に細かな動きが出来るのでしょう。
もちろん、人間の中にも手先が器用で、細かな歯車などをルーペで見ながら組み立てていく時計職人のような人はいます。おそらく、彼らなら精密機械組み立て用の産業用ロボットよりも緻密な製品を組み立てられるだろうと思います。
しかし、そんな人を500人も600人も集めてスマートフォンを大量生産することは不可能です。産業用ロボットに頼らざるを得ません。そうなると、今後、新型のスマートフォンを設計する場合、また部品メーカーがより小さな部品を開発した場合、現在の産業用ロボットでは組み立てられないと言うことは起こり得ます。ロボットメーカーは、より正確で緻密な動きが出来るロボットを開発することになるのでしょう。
いずれは超精密機械組み立て用の産業用ロボットが、人間の匠の技を抜き去る日が来るのだろうと思うと、悔しい気はします。